令和元年度(第106代)電気学会会長 中川 聡子

2019/05/31

平成から令和へ! 繋がる・拓く『連携』の未来

このたび会員の皆様のご推挙をいただき,歴史ある電気学会第106代会長を拝命しました中川聡子です。これから1年間,皆様のご支援を賜りながら全力でその任にあたる所存でございます。どうぞよろしくお願い申しあげます。
電気学会は、1888年(明治21年)5月,先人達の高き理想と熱き思いのもとに設立され,明治,大正,昭和,平成を経て,この5月に令和へと歩みを進めました。
今も昔も,安定で余裕のある電力インフラの整備は,国の繁栄の基盤です。そのため電気学会は設立当初から国との関わりの中で,電力網の基盤整備に学術面からの支援を行ってきました。その結果,日本は世界有数の産業立国へと発展していきました。これとの類比で,電気工学が情報・通信などの異分野と融合して作るサイバー・フィジカル空間内に,全く異質な”インフラ”を整備することで,今後,日本はまた新たな繁栄のステージへと進むことができると私は確信しています。
さて近年,各国の首脳や科学アカデミーなどが期待を寄せる『SDGs』や,財界・産業界が推進する『Society5.0』が注目されていますが,これらを達成するには最先端の科学技術やInnovationが不可欠とされています。電気関連分野を広くカバーする5つの部門を擁す電気学会は,これらゴールの達成に貢献できる総合力をもつ数少ない学会の1つであると思います。
時代は,かつての労働集約型から資本集約型へ,さらには知識集約型へと向かっており,社会が目指す前述のゴールを極めるには,縦割りに陥らない異分野との知識集約,すなわち『知の連携』が必要です。それは,異質なもの同士の連携においては,時に爆発的な化学反応が起こり,新たなInnovationが創出される可能性があるからです。
『知の連携』として,私は現在,(1)部門間連携,(2)新たなInnovation創出に向けた学会間連携,(3)研究成果が『Valley of Death』に埋没せずに社会に活用されるような産・学・官連携,を考えています。そしてこれら連携の成否は,まさに『マッチメーカ役』としての電気学会にかかっているのです。また,これらの『連携』を成功に導くには,電気学会の『広報力』が鍵となります。
『見えなければ,無いことと同じ』というのが私の基本的考えです。優れた研究成果や技術開発,また,学会が行う興味深く有益な企画,これらはすべて電気学会の宝と言えるものですが,これらの宝が『深い谷』に埋もれて見えなければ,電気学会は何も行動していないのと同じです。この電気学会の宝に,私は『広報』の力で,これまで以上にスポットライトを当てていきたいと考えます。
先般の北海道ブラックアウトで判明した『電気の停止=社会の停止』という事象から学んだ『電気の重要性』に深く思いを致し,電気学会は『知の連携』と『協働』を強化しながら、この令和という新しい『技術大革新の時代』を切り拓いていきたいと考えます。どうか皆様のお力を,電気学会にお寄せください。