電気学会におけるCPDの実施について

背景と目的

1999年日本技術者教育認定機構(JABEE: Japan Accreditation Board for Engineering Education)の設立、2000年APEC(Asia-Pacific Economic Cooperation)エンジニアの技術者相互認定の開始、2000年技術士法の改正などで国際的に通用する技術者としての資質の向上が求められています。
2001年度から「土木学会」や「化学工学会」では、それぞれ「土木学会技術推進機構」や「ケミカルエンジニア人材育成センター」を開設し、CPD(Continuing Professional Development(継続研鑽、継続教育)制度をスタートしています。現在では多くの学会、協会等でCPD制度を発足させています。
電気学会では2006年11月より、電子情報通信学会、情報処理学会と共同でCPD管理システムの一部を試験運用して、2009年4月より、CPD管理システムを用いたCPD支援を開始しました。
世界は、環境問題、エネルギー問題などで電気技術者の役割は益々重要になって来ており、技術者の技術力の維持・向上により、問題を解決して社会に貢献することが期待されています。
CPDの目的は技術者の資質の維持・向上を図るものであり、自己研鑽の結果を記録し、その実績を証明支援しようとするものです。例えば、健康管理のため、体重の記録を取ることにより、体重を減らすことができたり、万歩計を活用することにより、目標の歩数を歩くことができたりします。同様に研鑽の結果を記録することにより、達成感があり、技術力の向上に意欲を持って行うことができるようになります。
電気学会では、一定のレベル以上のCPDポイントを獲得した技術者を、電気学会CPD認定技術者と呼ぶ制度の導入を開始しました。電気学会CPD認定技術者になると、学会会員優待制度よりも、更に有利な条件で、図書の購入優待が用意されています。また、CPDポイント上位者を雑誌やホームページで公表することによりCPDへの意欲促進を図ることも検討しています。
CPDは企業における昇級・昇格・異動時の技術者評価、入札時等における企業評価、資格更新時におけるエビデンスなどとしても活用されます。
CPDは学生時代から行うことが有効であり、将来、技術士、博士号、電気主任技術者等の資格取得にあたって技術の基礎を作るのに最適なシステムです。電気学会はCPDを支援します。CPDを活用することにより、立派な技術者となり、社会に貢献することを期待します。

対象者

このCPDの対象者は、電気工学に関連する分野の技術者とする。なお、CPDプログラムの受講者については電気学会会員に限定することなく会員以外にも公開するが、電気学会会員に対しては受講料の割引制度を設けるなどして、会員サービスの一助とする。

CPDの種類と内容

1. 形態 電気学会が実施するCPDプログラムの形態は、次の4種類とする。
参加学習型 講習会、講演会、研究会、全国大会、部門大会、シンポジウムなど、電気学会または電気学会が認定した学協会等が主催・共催(同格共催)する各種公開技術会合への参加
情報提供型 上記各種会合における研究発表、部門誌への論文発表、各種調査専門委員会・技術委員会などへの参加
実務学習型 企業内研修、OJT
自己学習型 学会誌購読、学術誌・専門誌の購読、通信教育
社会貢献型 各種調査専門委員会,技術委員会,標準化活動などへの参加
講演会の講師,教材開発など


2. 講習会 特に講習会については、次の二種類のものを設ける。
基礎講座 例えば、電気学会で発行している大学講座を利用するなどして複数講座を設け、定期的に同一内容で開催するもの。
専門講座 例えば、電気学会の専門委員会が作成する特定分野の技術に関する調査報告(技術報告)を利用した講習会を初め、講演会、研究会、全国大会、部門大会、シンポジウムなど、各種公開技術会合がこれにあたる。

教育分野と内容

電気学会が実施する教育分野としては、「倫理分野」、「一般共通(リベラルアーツ)分野」、「専門技術分野」とし、教育内容は次のようなものとする。
教育分野 記号 教育内容
倫理 倫 理 倫理規定、技術倫理など
一般共通(リベラルアーツ) 環 境 地球環境、環境アセスメント、環境課題の解決方法など
安 全 安全基準、防災基準、危機管理、化学物質の毒性、製造物責任法(PL法)など
技術動向 新技術、品質保証、情報技術、規格・仕様など
社会動向 国内・海外動向、商務協定並びに技術に対するニーズなど
産業経済動向 内外の産業経済動向、労働市場動向など
規格・基準の動向 ISO、IECなど
マネージメント手法 工程管理、コスト管理、資源管理、維持管理、品質管理、リスク管理など
契約 役務契約、国際的な契約形態など
国際交流 英語によるプレゼンテーション・コミュニケーション、国際社会の理解、各国の文化及び歴史
その他 教養(科学技術史)、一般社会との関わりなど
専門技術 電気基礎 電気・電子物性、電気回路、電気・電子材料、計測技術、制御とシステム、電子デバイス、電子回路、センサとマイクロマシン、高電圧と大電流など
電気機器 電線およびケーブル、回転機一般および特殊電動機、直流機、交流機、リニアモータと磁気浮上、変圧器、リアクトル、コンデンサ、電力開閉装置と避雷装置、保護リレーと監視制御装置、パワーエレクトロニクス、ドライブシステム、超電導および超電導機器など
電力 エネルギーと電気、電力系統、水力発電、火力発電、原子力発電、送電、変電、配電、エネルギー新技術など
情報・通信 計算機システム、情報処理ハードウェア、情報処理ソフトウェア、通信とネットワーク、システム開発とソフトウェア生産技術、情報システムと監視制御システムなど
電気応用 交通、産業ドライブシステム、産業エレクトロニクス、電気加熱、電気化学、電池、照明、家庭電器、静電気、医用電子、超音波、電気探査と磁気探査、放射線など
電気共通 電磁環境、リサイクル、ライフサイクル評価(LCA)、地球環境、電気関係の規格と法規、電気安全、耐震工学、生産工学、電気技術史など
周辺技術 機械システム、材料力学、熱力学、流体力学、精密加工、メカトロニクス、金属材料、無機・有機材料、資源、建築、土木、農学など
専門技術分野は、2013年発行電気工学ハンドブックの分類に準じている。

電気学会CPDポイント

CPDポイントは以下の3つのパターンに区分されます。
「自己登録」において「CPD形態」(Ⅰ~Ⅲ)を選択する際は、3つのパターンのいずれに該当するかを考慮して、最も近いものを選択してください。
  • 知識ポイント(【Ⅰ】講習会、研修会、講演会、シンポジウム等への参加、企業内OJT、自己学習など)
  • 実務ポイント(【Ⅱ】論文等の発表、著作・執筆活動、特許出願・登録、社内外表彰、技術指導など)
  • 貢献ポイント(【Ⅲ】プロジェクトの企画運営、学協会・委員会活動への参画、講演会講師・教材開発など)

電気学会が会員として目標とするCPDポイントは,「基準20ポイント/年,推奨50ポイント/年」とする。

2019年4月改訂

CPDパターン 記号 項目 ポイント 上限 説明
Ⅰ 知識 講習会,研修会,講演会,シンポジウム等への参加 I-110 学協会・大学等の主催する大会、研究会、講演会などへの参加、聴講 1×H
H:受講時間
50P/年 1時間の受講が1ポイント,1時間30分→1.5時間と記入(少数第二位まで可)
I-120 民間主催の講演会,セミナ,講習会など への参加、聴講 1×H
H:受講時間
50P/年
企業内研修及び OJT I-130 企業内研修、教育、セミナへの参加 1×H
H:受講時間
20P/年
I-140 企業内OJTの受講 1×H
H:受講時間
20P/年
資格取得,自己学習 I-210 国家資格以外の公的資格の取得、CPDを伴う更新 15P/件 30P/年 *1
I-211 国家資格の取得、CPDを伴う更新 20P/件 40P/年 *1
I-212 民間資格(専門分野)の取得、CPDを伴う更新 15P/件 30P/年 *1
I-220 自己学習-認定学術誌の定期購読 5P/件 10P/年 学協会誌(証拠資料必要)
I-221 自己学習-民間専門誌の定期購読 5P/件 10P/年 証拠資料必要

実務
研究会,論文等の発表 Ⅱ-110 学会、研究会の発表者および座長 5P/件 30P/年
Ⅱ-111 学会、研究会発表の共著者 5P/件 30P/年
Ⅱ-120 論文の主著者-査読有 5P/ページ 40P/件 *2
Ⅱ-121 論文の主著者-査読無 10P/件 30P/年
Ⅱ-122 論文の共著者-査読有 2.5P/ページ 20P/件 *2
Ⅱ-123 論文の共著者-査読無 5P/件 30P/年
Ⅱ-130 著作,執筆活動(専門分野の書籍,教材;単独,共著,編著) 1P/ページ 40P/件
専門的開発業務 Ⅱ-210 専門的開発業務 ポイント無し 通常の業務なので認められない
Ⅱ-220 プロジェクトリーダ業務 5P/件 30P/年
Ⅱ-230 プロジェクトマネージャ業務、JABEE受審側まとめ役 7P/件 35P/年
Ⅱ-240 特許・実用新案など(出願) 10P/件 30P/年
Ⅱ-241 特許・実用新案など(登録) 20P/件 40P/年
Ⅱ-250 業務上の著しい成果(社内外表彰/学内外表彰) 20P/件 40P/年
企業内技術指導,業務経験 Ⅱ-310 企業内技術指導(教育、講演、セミナなど)の講師 5P/件 30P/年 企業内で行われる研修会等の講師
Ⅱ-320 企業内・学内成果発表(論文、報告、発表会など) 5P/件 30P/年
企画運営,助言,指導 Ⅱ-330 企業内・学内プロジェクトの企画運営、助言、指導(オーガナイザなど) ポイント無し 通常の業務なので認められない
Ⅲ 貢献 委員会活動 Ⅲ-110 学協会の委員会活動-委員長・主査・幹事・幹事補佐および編集委員会活動 10P/件 30P/年 *3
Ⅲ-111 学協会の委員会活動-委員、および論文査読 7P/件 35P/年 *3,論文査読は1件当たり
Ⅲ-120 標準化活動-議長・ラポータ・エディタ 10P/件 30P/年 *3
Ⅲ-121 標準化活動-会議参加・寄書作成 7P/件 28P/年 *3
講演会講師 Ⅲ-130 学協会主催講演会の講師および教材開発 7P/件 35P/年
Ⅲ-220 大学、研究機関主催の講演会の講師 7P/件 28P/年 大学等の恒常的な非常勤講師は認められない
Ⅲ-230 民間主催の講演会の講師 5P/件 30P/年
研究活動等への参加 Ⅲ-210 大学・研究機関・国家プロジェクト,JABEE審査-委員長・幹事・幹事補佐・審査長 10P/件 30P/年 *3
Ⅲ-211 大学・研究機関・国家プロジェクト、JABEE審査-委員・審査員・オブザーバ 7P/件 35P/年 *3
CPDポイント取得証明書発行の際には証拠書類の提示が必要なので保管しておいてください。
注*1:CPDを必要とする資格の更新も認められる。
注*2:査読有の論文主著者は1ページ当たり5ポイントで換算する。最大40ポイントまで。共著者は主著者の1/2。
注*3:学協会の委員会活動,プロジェクト等は活動年度当たりのポイント。委員会活動は,原則として学協会公認のものに限る。